11年目のバレンタイン〜恋を諦める最後の告白
真人さんが大学を、麗奈とわたしが小学校を卒業した年に、鈴宮家のご両親は事故で亡くなった。
真人さんはちょうど就職が決まっていたからよかったものの、さすがにまだ12歳の麗奈はうちの塚本(つかもと)家が引き取り、養子にするという話もあった。
でも、真人さんは「残された唯一の家族ですから、麗奈はぼくが育てます」と、やんわりと。しかしきっぱりと断ってきた。
それ以来、彼は20代そこそこの若さで親代わりを務めてきた。慣れない家事をこなし、家のことも仕事のことも、一切手を抜かず頑張ってるのは知ってる。
とはいえ、男手だけだとどうしようもない部分は、わたしやお母さんがフォローしてるけど。
同世代なら青春を謳歌し遊びに恋にと楽しくて仕方ない時期なのに、真人さんはただ一途に親代わりを務めてきた。
ただ、わたしたちが高校生になったころ……麗奈が「アタシはバイトもするし、彼氏も作って遊ぶから!兄いも好きにしなよ」と言ってからかな。真人さんに女性の影が見え隠れするようになったのは。
その頃すでにどうしようもないくらい真人さんのことが好きだったわたしには、ショッキングな出来事だった。