11年目のバレンタイン〜恋を諦める最後の告白
雅人の…息子の前だから我慢しようと思ったのに、堪えきれず涙がぽろぽろこぼれ落ちた。
「それなのに……いまさら、なんのつもりですか!?また、わたしをもて遊ぶつもりですか?いい加減、わたしに関わらないで!!」
力一杯彼から離れようと藻掻くけど、真人さんは離してくれない。
そして。
「違う。ぼくは……フッたつもりはなかったんだ」
真人さんが必死に言い訳してきたけど、信用なんて出来なかった。
「だから…なんなの!?他の女性と結婚してるくせに!」
「結婚なんて、してない」
「嘘言わないで!」
「これを見てくれ!」
真人さんが差し出してきたのは、全部記載の戸籍抄本。
そこの婚姻の欄は、空白だった。
「う、嘘……だって……美穂さんは?」
「美穂?…どうしてその名前……」
眉を寄せた真人さんが怒ったように見えて、慌てて理由を話した。
「だ、だって……真人さんの家でカツカレー食べた時……画面に出てた…真人さんは幸せそうに見えたし、そわそわしてたし……」
「……美穂は高校のクラスメートでブライダルサロンで働いてるんだ。だから、色々聞いてたんだ…美幸を連れて行こうかと思ってたから」