11年目のバレンタイン〜恋を諦める最後の告白
もう、諦めよう。
ようやくそんな気持ちになれた。
内定式に出ていて内諾をしていた就職先は、勤務地の希望を訊かれていた。今までは競争率の激しい地元を希望していたけれども……。
真人さんを諦めるために、距離を置きたくてわざと人気がない地方への勤務を希望した。
地元から、新幹線で2時間。さらに電車で2時間。バスに揺られて1時間かかる距離だ。
これだけ離れれば、きっと大丈夫。
真人さんが結婚するなら、未練がある女が近くにいたらいけない。結婚できる幸福な女性に、意地悪しないという自信がない……。
(大丈夫……きっと真人さんはわたしのことなんて、すぐに忘れるから……)
今年のバレンタインデーで、最後にしよう。
そう決めたわたしは、最高の自分を演出するために準備をした。
ブランドに詳しい麗奈に一緒に選んでもらった、ドルチェ&ガッバーナのミディ丈ブラックワンピ。
中古でも相当値が張ってバイト代2か月分が飛んだけれども、最後のバレンタインデーに相応しい。
告白をしたあとは……一度だけでいいから、と思い出を作るつもりだった。
たった、1時間でいい。思い出がほしい。
それでもう、あきらめるからーー。