身代わり同士の結婚。 〜年下ですが、愛してくれますか?〜
◇ほんとうの夫婦
私がリビングを飛び出して部屋に入ってから何分経ったんだろう……まだしたままだったエプロンを外す。
「……これ、入籍して初めて葵織さんにもらったプレゼントだ」
白とピンクの小さな花柄で膝より上の丈の可愛らしいフレアエプロン。照れながら渡してくれた時、かっこいい彼が可愛く見えたのを覚えている。
「はぁ……年下だもんなぁ、ダメだよね」
ブツブツと呟きながら何度目かのため息を吐いているとドアがノックされる。
「優結? 私よ」
「お母さん……」
「そうよ。大丈夫?」
優しい声で優しい言葉で私に問いかけるお母さんは私を安心させる。泣きたくないと思うのに涙腺が緩み、涙が溢れた。
「……うん、大丈夫だよ」
無理にでも大丈夫と明るい声で言ったはずなのにお母さんには分かってしまったようで「そっか」と優しく言った。
「優結は、葵織さんが大好きなのね」
「……っ……なんでわかるの?」
「ふふっ、分かるわよ? でも私は嬉しい。ちゃんと優結が恋が出来てて」
「だけど、相手に好きになって貰わなきゃどうしようもないよ。片想いする前に振られちゃったものだもの」
好きじゃないって言われちゃったし、もうダメだよ。
やっぱり、お姉ちゃんが言っていたのは嘘だった……少しだけ期待したけど、そんなことなかった。
「優結は伝えたの? 葵織さんに好きだって」
「伝えて、ない。でも、さっき好きじゃないって!」
「最後まで聞いたの? それに、想いを告げずにこのままはあなたが辛いだけなんだから」
「でもっ、ちゃんと言ってまた好きじゃないって言われたら立ち直れないもん」
さっきも逃げ出したほどなんだから、正面から言われたら逃げ出すどころじゃない気がする。