【電子書籍化】婚約破棄したい影の令嬢は
そんな気遣いを無にするがごとく、フィリップは今にもディアンテに殴りかかりそうな勢いである。

ディアンテは、もう何度目か分からない溜息をついた。
フィリップの癇癪はいつものことだ。
思い通りにならないことがあると、こんな調子で駄々を捏ねる。

(さっさと婚約破棄をしてくれればいいのに‥)

ディアンテはそう思っていた。
騒ぎを聞きつけて公爵や公爵夫人、そしてフィリップの妹がやってくる。


「もう嫌だッ‥限界だ!今すぐ子爵に婚約破棄の手続きをお願いしてくれ」

「しかしフィリップ‥!こんな地味で無表情で愛想がなくとも、アールトン家の血を引いてる貴重な存在なんだぞ!?」

「‥‥こんな女なんて知っていたら婚約などしなかったのに!!」

「こんな地味で可愛くないディアンテにも‥‥探せば良い部分もあるわ!!きっと」

「もう限界だッ!!」

「お兄様、諦めるのはまだ早いわ‥!公爵家の為よ!」

上からサムドラ公爵、公爵夫人、フィリップの妹のレミレ。

ディアンテが此処にいることは忘れているのだろうか。
それでもディアンテは、ひたすら耐えるしかなかった。
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