【電子書籍化】婚約破棄したい影の令嬢は
アルフレッドの言葉を聞いて、ディアンテは思いきり首を振った。
髪も乱れていたとしても、ドレスが汚れていたとしてもディアンテは頑なに顔から手を離さない。
(早くどこかに行って‥!お願いだからッ)
ディアンテは緊張からか、荒く呼吸を繰り返す。
これ以上、アルフレッドと関わってはいけない。
「初対面の君に、こんな事言うのはおかしいかもしれないんだけど、何か不思議なものを感じるんだ‥」
「‥‥気のせいでは?」
「そうかな?」
「はい」
「‥‥」
「‥‥」
「そうだね‥‥君が大丈夫なら僕はパーティーに戻るよ」
「‥‥はい、ありがとうございました」
ーーバタン
ドアが閉まる音を聞いて、ディアンテは詰まっていた息を吐き出した。
震える手をゆっくりと外して、瞼を開いた時だった。
「‥‥びっくりした?」
「ーーーッキャアァア!?」
目の前にアルフレッドの顔があり、ディアンテは悲鳴をあげた。
「ふふ‥良かった、怪我はないみた‥‥ッ!?」
アルフレッドが悪戯にニコリと笑った後、驚いたディアンテと視線が絡んだ瞬間‥。
アルフレッドはディアンテを見て動きを止めた。