【電子書籍化】婚約破棄したい影の令嬢は
「‥‥‥ッ!!」
アルフレッドは頭を押さえて、床に膝をついた。
「ぁ、‥ッ」
ディアンテは口元を押さえた。
『ーーーー愛してもいい?』
蘇る最後の記憶。
あの時の言葉と苦しい想いだけは心に刻み込まれていた。
アルフレッドが頭を押さえながら顔を上げた。
あの時と同じオレンジ色の瞳がディアンテを捉えた。
その瞬間に起きてはならない事が起こってしまったのだと気付く。
ディアンテが急いで立ち上がり、ドアから出ようと手を伸ばした時だった。
ーーーガンッ
「アイ、ネ‥?」
もう、2度と呼んでもらえないと思っていた名前‥。
激しい音と共に、アルフレッドがディアンテを壁に押し付けた。
アルフレッドと壁に挟まれたディアンテは目が合わないように必死に首を背けた。
アルフレッドは震えるディアンテの手を取って、優しく唇を寄せる。
以前よりも強くディアンテを求めているようだった。
アルフレッドの表情に胸が締め付けられる思いがした。