【電子書籍化】婚約破棄したい影の令嬢は
それから、数日経った時だった。
少年は足を引きずりながら川へと向かっていた。
川に入った少年は、どうやら水浴びをするつもりらしい。

アイネがいつものように少年を観察していた時だった。
ズルっとバランスを崩した少年は川へと流されていく。


「‥‥危ないッ!!」


アイネは川に飛び込んで少年を引っ張り上げた。


「ーーーッゴホ!!」

「‥っ、どうしよう」


少年とアイネはびしょ濡れになった。
咳き込む男に触れようとして、アイネはハッと気付く。


(姿を見せてはいけない‥!)


アイネが少年から離れようとした時だった。
冷たい手が、アイネの腕を掴む。


「あ、りがとう‥」

「!!!」

「いつも僕を助けてくれたのは、君でしょう‥?」


アイネは声を出せずに首を振った。
それに人に触れられてしまった。
ライラックの瞳に涙を溜めてガタガタと震えるアイネを見て、少年は眉を寄せる。
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