初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました
「アーロン王子殿下は、二度と帰国は許さないと仰せになられたそうですが、追放先を帝国とされたのは、帝国には公爵家のお知り合いがいて、
クリスティン様がお過ごししやすいだろう、と」

「……」

「王子殿下のお側にいたアン・ペロー嬢はそれを聞いて納得していない顔をされたとか……
 友人曰く、もっと厳しい御沙汰を期待していたのでは、と」

「いいね
 そういう意見が聞きたかったんだ」

「普通は追放先に過ごしやすい所は選ばない」

殿下は楽しげに仰り、エドガー様がつぶやかれました。

殿下はテーブルの向こうから、こちらに身を乗り出されました。


「アーロンは断罪の打ち合わせをペロー達としていたはずだ
 もっと王国から離れた条件の厳しい場所に決めていたんだと思う
 ところがクリスティン本人を目の前にすると、
日和って土壇場で追放先を変更した
 それを聞いて、ペローや取り巻きは驚いただろうな」

「……」

「わかるかな? それこそがクリスティンの力
なんだ
 妖女の魅了の力だよ」

妖女の魅了の力……?

皇太子殿下は、はっきりとそう断言されました。


 ◇◇◇


「あの女がそれをわかっていて行使しているのか、それとも無意識でその力が働いているのか、 そこのところは、まだ見極められていない」

「ご自身に魅了の力があると、クリスティン様がご存じないかもしれないのですか?」
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