初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました
その文面に私は少し笑ってしまい、彼女の気持ちが嬉しくて、手紙を胸に押しあてました。


これからも誘うと、皇太子殿下は仰られました。
次は真実の愛についてお話しようと。
そして私はノーマン様の事をお聞かせしなくてはなりません。

(私が見聞きした事実のみをお話するだけだ
私の感情など、お聞かせする必要はない)


『君が被害者だから』と
殿下は仰せになりました。
本当にそれだけでしょうか?


私は隣国の、たかが伯爵家の娘です。
皇太子殿下と帝国の名家のご嫡男と3人だけの
お茶会など、普通は有り得ない事です。

殿下のお言葉を、そのまま受け取れる程おめでたくはないつもりです。

ですが殿下にお誘いを受けたら、お断りは出来ません。

(気を付けるのよ、シャル)


殿下の赤く光る瞳に気をゆるしてはならないと、
私は自分に言い聞かせました。


 ◇◇◇


それほど日を開けず、再びお茶会のお招きを受けました。

お約束していただいた通り、小さなお花を束ねたブーケに添えられたカードには、
お迎えの馬車の時間とエドガー様のお名前が記されていました。

吟味された可愛らしいブーケはそれからも毎回の事となり、
女子寮ではちょっとした騒ぎになっていたようですが、私本人の耳には入っておりませんでした。
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