初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました
やはりキャルの同席は叶わないのかしらと、本人に尋ねたのですが。
キャルは大きく首を振り、すごい勢いで否定しました。


「いやいや、私はご遠慮させていただきますわよ
 邪悪なダミと長い間顔を付き合わすのは、ね」

キャルはダミアン皇太子殿下のことを
邪悪なダミ、と呼んでいました。


「最初のお茶会の時は同席してくれるつもりだったんでしょ?」

「最初はシャルが苛められないか心配だったからよ
 だけど、おじさんは心配ないって言うし、
 何を話しているか教えて貰ってはいないけれど教えてもらえないってことは、私が知る必要のないお話なのよ」

「そう……なのかな?」
 
「そうなの!
 知る必要のないお話は聞かない方がいい
 私は長生きしたい!」

キャルが物騒な事を言い出しました。


 ◇◇◇


「さて、今日はアーロンとペローの真実の愛について話そうか」

場所は前回と同じバイロン侯爵家の温室です。


「俺の話は長くなるから、先にノーマンの話を
聞かせてもらおう」

「ノーマン様の行動と言葉を、お話させていただいたらよろしいでしょうか」


『余りお聞かせするほどの話ではないですが』とおふたりに断って私は話し始めました。


「あの婚約破棄の夜の事ですが……
 会場に着き、クリスティン様のお名前が聞こえると、ノーマン様は私を置き去りにして行ってしまわれたのです」
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