初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました
「あいつも誰かから話を聞いていたね?」

「どのような話を聞かれたのか私は教えていただいてはいません
 とにかく行きの馬車では機嫌が良くて私のせいで遅刻したのに、責められなかったのです」

「だけどクリスティンの話を聞いた後の帰りの
馬車では、だね」

「その通りです
 帰りは人が変わったように不機嫌で無口で、
私にイライラをぶつけてこられました
 君さえ遅れなければ、と」

殿下はエドガー様が入れられた紅茶を一口、お口に含まれました。 
私は続けました。


「これは後から従姉から聞いたのですが……
 彼女の婚約者様もやはり
『何かクリスティン様のお力になれることはないだろうか』と、
その日以降もこぼしておられたそうです」

「その男も同じ学園だったのか?
 クリスティンも罪な女だな
 程度の差はあれ、魅了された男は多いな」

私は頷きました。
スカーレットとヒューバート様は中等部の頃からのお付き合いでした。
『あいつもバカなのよねー』とスカーレットは笑いましたが。
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