初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました
「私はそれから直ぐにあのおふたりは結ばれた
ものだと、思っていたのですが……」

「俺もどうしてノーマンがあの女に手を出さな
かったか不思議だったけれど、今君が教えて
くれた」

「私が、ですか?」

「ノーマンにとってあの女は女神だったって話『神に愛された人間は死んでしまう』だったかな
 あの妖女に手を出して、ランカスター公爵に
殺される事を恐れたんだよ、ノーマンは」

「……」


エドガー様がお茶を入れ替えてくださり、殿下はテーブルに肘を付いて、私の顔をご覧になって
いました。


「これを聞いてノーマンを許す気になった?」

「……有り得ませんと、断言致します」

「当然だね
 あいつは別荘に行った時点で、君を裏切って
いるんだからな」

「殿下、話題を変えませんか?」


不意にエドガー様が殿下に仰いました。


 ◇◇◇


「俺はアーロンとペローの真実の愛は偽りだと
思っている」


指輪の魅了など存在しないと、殿下は前回の
お茶会で仰られました。
それならば、おふたりは本当に愛し合っていた
のだと思っていましたが。


「催眠術にかかりやすい者の特徴として、雰囲気に呑まれやすい者と、殿下が言われたでしょう?
 アーロン王子殿下の側近には騎士団団長の息子がいました
 多分、その男が王子殿下にクリスティンの持つ力を教えたのではと、考えています」
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