初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました
「時間をかけて調べさせたが遺体を見た、という話は出てないからな
 名前を変えて、何処かで生きているのかも」

では、ペロー嬢だけが。


「自分達だけ生き延びるなんて!」
 
「ずるいか?
 しかし、あいつらは本当の自分に戻れない
 あの時死なせてくれてたらと、苦しむ日が来るかもしれない
 ペローと彼女の家族の死を、一生背負い続ける
 どっちが楽だったかは本人にしかわからない」

そう仰られた殿下の赤い瞳は、遠くをご覧になっている様に見えました。


「そうだな……
 シャーロットが気に入ってくれるかも知れない話を聞かせよう」

「王家の話でしたら、もう聞きたくございません」

「10日に一度、ペローの墓前には白い薔薇が置かれている」


白い薔薇。
いつもペロー嬢が幸せそうに受け取っていた……


 ◇◇◇


『クリスティンの事だけど』そう殿下は切り出されてから、お茶を一口含まれました。


「自分が主張しなくても周囲の人間が都合よく
動いてくれる状態って、本人はどう思ってるんだろうね?
 単に自分は幸運な人間と思っているかもな」


誰もが自分の思い通りにならない人生を生きています。
ですが、幸運なクリスティン様はご自分が望めば叶うのです。
神様にも人にも感謝したことはないかも知れません。
それは果たして幸せな事なのでしょうか?
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