初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました
「だが神は身の程知らずに思い上がった人間は
許さない 
 唯一欲しかったものは、あの女の手には決して入らない」

「クリスティン様が唯一欲しかったものとは?」


私の問いに殿下はエドガー様の方に視線を向けられました。


「その件に関しては少し時間を貰おうか
 ……心の準備が必要、という案件だから」

クリスティン様が唯一欲しかったもの。
それはノーマン様ではないと、思いました。


「あちこちに話が飛んで申し訳ないけれど、もう少し付き合ってくれないだろうか
 話すことで、俺のなかで整理出来ることもあるんだ」


私にはもう、殿下にお渡し出来る情報などありません。
殿下がお話しになる事を聞くばかりです。
それで整理が出来ると、仰るのなら。
このお茶会にも意味がありますが……


ですが。
本当にそれだけで、ここまでの話を私に聞かせたのでしょうか?


カップの残りのお茶を一気に飲まれて、いきなり殿下が席を立たれました。


「次回のお茶会は、俺の心の準備が必要だから
時間をくれないか」
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