初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました
あわててエドガー様と私は立ち上がりました。

 
「次に会うのは学院だと思うけど、その時は邪悪なダミじゃなくて、
『帝国の黒薔薇』だから、よろしく」

殿下はそう早口で仰って、スタスタと温室を出ていかれました。
お迎えの馬車は、まだ到着されていないので
もしかしたら、侯爵家の隠し通路を使われるの
かもしれません。

残されたエドガー様と私は顔を見合せました。


 ◇◇◇


寮へ送っていただく馬車の中で、私はエドガー様に不思議に思っていたことを尋ねました。


「クリスティン様ご自身も自覚されていなかった
かもしれない、と殿下は仰られていましたけれどそれならばどうして皆様は、その魅了にお気づきになられたのですか?」

エドガー様はどう答えたらよいか、考えられているように見えました。


「どこまで話すことが出来るか、判断が難しい
のです
 時間をくれと殿下は仰られました
 ご自分の口から貴女にお話しになるおつもり
です」

「エドガー様を困らせることは、本意ではございません」

「私の話せる範囲でお答え出来るとしたら……
 帝国にもあの女の被害者は存在するということ
 その御方の為に、皇太子殿下は自らあの女を
追い詰めたいと皇帝陛下にお願いして、この一件に関わられたということです」
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