初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました
「幼い頃から知った仲なので、殿下は妹には顔を作りません
 それと同じように貴女に対しては、初対面から
いささか失礼な態度を取られた
 殿下は女性には皇太子の顔を外されないのに、私は驚きました
 多分殿下にとって、貴女は楽なお相手だという事です」

「……」

「別な言い方ですと、気に入られたのだと……
 こんな単純な理由はご納得出来ない、ですか?」

エドガー様からじっと見つめられて、尋ねられて。
再び私は頷きました。


「殿下はあの地位と、あの容姿から女性からは
その……色々とありまして
 その上クリスティンのせいで、今の殿下は女性に対して潔癖な程、用心されています
 ですから、ご自分をそのように見ていない貴女に安心されたのだろうと」

「私がそのように殿下に想いを持っていないから、ですか?」

「初めてお会いした日に、殿下が貴女の肩に触れましたね?
 その時に確証を得られたのだと、思いますが」


初対面で相手が自分をどう見ているか感じ取り、
肩に触れただけで確証を得た?
また、それも何かの力なのでしょうか?


「殿下も力をお持ち、なのでしょうか?」

「『力』というより、『勘』の方が近いかと
 私の場合は『気配を感じる』ですが、誰しも
このくらいの勘は持っているのでは?
 あの女のように他者に影響を与えるようなものではありません」

「……」

「まだ、ご納得いただけていないようですが
 そんな事で、と信じられないと思います
 ですが、意外にこの世の中は、そんなに難しく考えなくても、いいのではないでしょうか」
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