初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました
「……」

「王子殿下の婚約破棄にしても、何人かの人間の単純な欲が重なっただけです
 それに、あの婚約破棄がなければ貴女はここにはいないでしょう
 無関係とは言えません」

「私は殿下のお話を聞いているだけですのに?」
 
「それだけでいいのではないでしょうか
 貴女は、ご自分の事を『たかが』と言われました
 殿下や私に、たかがの貴女を騙しても何の得
など有りません
 ここでは、誰も貴女に嘘はつきません」

「……」

「今の貴女は男性を、特に年齢の近い殿下は信用出来ないかもしれませんが……
 繰り返しになりますが、私達は決して貴女を
傷付けたりしません」


エドガー様が俯いた私の手を、そっと握られました。

そして直ぐに外されましたが、その手はとても温かく、外されても私の心を包んでくれているように感じました。


 ◇◇◇


殿下は学院に戻ってこられましたが、時折お見掛けするそのお姿は、
決まった顔触れの4人の男子生徒に囲まれており少し離れた場所からはエドガー様ではない騎士様が見守られておりました。
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