初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました
たまに王子が講義の様子を見学にやって来ると、時間ではないのに終了になった。
そして王子とのお茶の時間になる。

別に少女が頼んだ訳ではないのに、皆が優しく
親切にしてくれる。
取り巻きのご令嬢達からは鞭を使う教師がいる
ことを聞いていたが
少女はそんなものを使われたことはない。

それが当たり前に思えて、最近は少女が周囲に『ありがとう』と言うことも少なくなってきて
いたが、誰も気にしていないようだった。


それなのに。
今日のマナーの授業は代理の講師が来た。
いつもの女性講師が体調を崩したのだ。

代理講師は若い男だった。
その年齢の異性に対して、いつもするように
瞳を見て挨拶をした。
すると無表情に
『カーテシーの練習を今日は集中して行う』と
言われた。

カーテシーに時間をかけた事などなかった。
男なのに正しい作法が教えられるのかと、
言いたくなったが、黙っていた。

代理講師は口うるさく、何度も彼女の姿勢を注意
した。
挨拶する相手によって変わると、腰や膝を曲げる角度、視線の上げ下げを確認させられる。

少女は疲れて『休みたいのです』と、伝えたが
『まだまだ』と一言だけ返して、講師は続けた。


こんな失礼な男は初めてだった。
もしかしたら、鞭を使うのかもしれない。
少女が恐怖で身を固くすると、ようやく講師は
休憩にしてくれた。
< 132 / 190 >

この作品をシェア

pagetop