初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました
「まず我が帝国皇家の男が愛するひとは、ひとりだと、知っていて貰いたい」

「愛するひとは、ひとり……」

「俺の父上の皇帝陛下も側妃を持っていない
 もちろん先代の皇帝陛下もそうだし、この俺も内々に決まった相手がいて、そのひとだけと決めている」


確かにレオパード帝国の皇家は一夫一妻制が保たれていて、後継争いなど長年起きてはいないと
授業で学びました。


「そして俺の叔父上も、それは同じだ」

殿下はエドガー様の方に向き直られました。
エドガー様は頷かれると、ため息を一つ吐かれてこう仰ったのでした。


「あの女が愛するただ一人の男が
 元皇弟殿下のグッドウィン公爵閣下です」


 ◇◇◇


傷心を癒す為という名目で、レオパード帝国を
訪れたクリスティン様は、最初は風光明媚な帝国の景勝地を観光されていました。 

ですが、そのような旅も何ヵ月も過ごしてしまうと飽きが来ます。
クリスティン様も同様で、旅先から帝都の皇帝陛下に落ち着きたいと、使者を立てられたのだそうです。


「あの女の事をくれぐれも良しなにと、
カステード王家から親書をもって頼まれていた
陛下は困っていらした」

「こちらはカステードから体よく妖女を押し付けられたと、いうことです」
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