初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました
うつ向かれたエドガー様の両手の拳が震えているように見えました。


「もう少しエドガーが遅かったら、叔父上は
両方の目を失っていたよ……」

殿下がエドガー様の肩に触れられて、静かなお声でそう仰いましたが、エドガー様はしばらくお顔を挙げられませんでした。


年上の男性に対して、このような気持ちを持ったのは初めてでした。


大丈夫。
貴方のせいだと、誰も思っていない。
だから前を向いて。


「そうだ、シャーロットが好きそうな話がある」

殿下の声は今までで、一番優しく聞こえました。


「叔父上はおひとりで帝都を出られたが、
 先に叔母上と子供達がグッドウィンで待って
いた
 叔父上を泣かせたくて、皆で秘密にしていたんだ」


皇太子殿下は本当にお気遣いの出来る御方だと、思いました。



もう聞いてもよいのではと思い、私は尋ねることに致しました。


「クリスティン様の愛する男性が公爵閣下だと
わかりましたけれど、ノーマン様に愛を告白されていたのは何故ですか?」

すると少し気が楽になられたのか、殿下はいつもの皮肉気な笑みを浮かべられました。


はっきりと答えてくださらず、ただ笑っておられるので、私はエドガー様の方に向きました。


「ノーマンは金髪で目が緑です
 色は細かく言うと少し違いますが」

「それって……閣下?」
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