初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました
ようやく殿下に解放されたエドガー様はまっすぐに私の所に来て下さって、手を取り甲に口づけをされました。


「ガルテン嬢は今宵もますます美しいですね」

「ありがとうございます、バイロン様
 貴方もいつもに増して、凛々しくていらっしゃいますわ」

周囲の方達の耳がありますので、私達はお互いに他人行儀な言葉を交わしました。

ダンスに誘ってくださったのですが、私が断りますとテラスへと誘われました。


「本当に悪魔のような御方だよ
 俺の前でわざと王女殿下の髪を撫で、手を握り、耳元で甘い言葉を囁かれていた」

「イライラしている貴方のご様子を楽しまれて
いらっしゃったのね」

エドガー様と皇太子殿下の年齢は8歳離れておりますが、辛い時間を共に過ごしたおふたりは、
本当はとても仲良しなのです。


「ずっとロティが不足していたよ
 君を補充させて」

ロティというのはエドガー様だけの私の呼び名です。
エドガー様の胸に引き寄せられると、私は目を閉じました。
彼の腕の中に閉じ込められると、何もかもから護っていただけるような。
絶対的なものを感じるのです。


「ノーマンが君のところに来ていたね
 あいつに何を言われたの?」

「話を聞いてほしいと」

「今になって、浮気の言い訳?」

エドガー様は、私が留学した理由をご存じです。
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