初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました
選ばれし赤ん坊……

その子は王家と皇家両方の血を受け継いで。
成長すると共に母親と同じように魅了の力を
ばらまいて。
当たり前だから周りの人達の気持ちは考えない。
知らない内に愛されて、知らない内に憎まれる。


私もあなたの母親を憎んだの。
あなたの母親は自分の事しか考えていなかったの。
自分の一言が平民の女の子を殺しちゃったこと。
彼女の小さな妹も一緒に死んだこと。
それを聞いても、あなたの母親は平気だったと
思うよ。


かつて凛々しかった少年の母親はずっと泣いて
いたよ。
皆で救いの手を伸ばしたけど彼はその手を振り
払って。
皆で注意したのに彼はその声に耳を塞いで。
立ち入り禁止の底無し沼に。
あなたの母親の所に行っちゃったの。
あなたの母親に溺れて、初恋の沼に沈んで
しまったの。
それで彼は全部失くしたの。


私もあなたの母親を憎んだの。
だから教えてあげる。
あなたの父親はまだ産まれてもいなかったあなたを厭んだの。
自分の血筋の継承権を放棄するくらいに。
あなたの母親を見たくないと自分の美しい目を
潰すくらいに。


いつかあなたが母親から受け継いだ力に
気付く時が来るかも知れない。
あなたの母親は自分でも知らない内に
人をいっぱい傷つけたけど。
あなたはその力を善き方向に使って欲しい。

あなたに愛する人が出来て、
あなたの力が消えても。
その力はずっと受け継がれていくの。

可哀想なあなた。 


可哀想な……
 
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