初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました
それからもお茶会は度々開かれて、3人で色々なお話をしました。

真実の愛や魅了について語られることはなくなり
クリスティン様やノーマン様のお名前が
もう私達の口に登ることはありません。


意外だったのはエドガー様が甘いものをお好き
だったことで、
帝都の美味しい菓子店を教えてくださいました。

隣でそれを聞いていらっしゃった皇太子殿下が
『教えるより連れていけばいいのに』と
仰るので、
エドガー様はお茶を取りに部屋を出て行かれました。


殿下がただひとりと、お心に決めた方のお名前を教えてくださったのは新年を迎えた頃です。
殿下は成年皇族となられ、長く伸ばされていた
見事な黒髪を短くされていました。


その御方はカステード王国の第1王女メイベル殿下でした。
内々でお話はまとまっておりましたが
アーロン王子殿下の喪が明ける前に、皇弟殿下が大怪我をされて、両国にご不幸が続いたので
正式発表の良い時期を探っているのだと、
いうことでした。 


私は思いきって尋ねさせていただきました。

 
「皇太子妃決定の伝統があると……」

「あんな前時代的なもの、陛下に言って廃止を 頼んだよ
 女性を品評会みたいに並べて比べるなんて、
時代錯誤もいいとこだ
 でも王子の品評会ならいいな、優勝する自信がある」


帝国学院を卒業したら、直ぐに王国へ帰るのかと殿下に聞かれました。
この帝国を、帝国の方達を。
私は愛しはじめていて、まだ別れたくありませんでした。


「仕事を探してるなら俺には強力な伝手がある
 君の父上の説得も任せてくれていいよ」


まさか、仰られた強力な伝手というのが皇妃陛下だとは。
殿下がお父様に、皇家の御使者を出されたことも。
その時の私には知るよしもありませんでした。
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