初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました
「さて……」

男が言ったように、口は少し動かせるように
なってきたが、体はまだ自由に動かせない。


「ノーマン、お前には感謝してる
 御礼に奢りたかったのは本当だ」

「だ、だから何のお、御れ、れぇいだ」

「まだ滑舌悪いな
 しばらくしたら、もっと楽になる」

「た、たすけ、けで」

「そんな当たり前の事しか言えないなんて、
 がっかりだな
 目的地まで結構かかるぞ
 もっと気を楽にもてよ」

「ど、どご?」


目的地。
そこに着くまでは俺は殺されないと言うことか?
それに微かな希望の光が見えた。


こいつに直ぐに殺されるのではない!
絶対逃げるチャンスはある!

男は俺の顔を見て嗤った。


「元気出てきたな
 その調子で、歌って貰おうか」

「……」

「何で俺の代わりに、クリスティンを殺した?」
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