初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました
仕方なく裏門で見知った顔が通らないか待った。
クリスティン様が湖畔の別荘に伴った使用人達。
出来たら女がいい。

女は皆伯爵家の俺にも丁寧だった。
男達はクリスティン様の前では慇懃に接したが、俺だけだと、冷たかった気がする。

特に彼女専用の執事は、昔見習いの頃から
彼女の世話をしている、と紹介された時から
俺を見る目付が。

俺を見るギリアンの目と同じだった。

ここに来る直前にギリアンに会って、その目の
意味を理解した俺は、クリスティン様の執事にも憎まれていたと、気付いた。

だからあいつにだけは、会いに来たと知られてはならない。
幸いなことに暗くなる前にメイドを捕まえた。


(閣下に命じられて、お嬢様は別荘に戻された
何故だかわからないけど、お嬢様と一緒に別荘に行ったのは、お嬢様の乳母をしていた侍女長だけ
護衛数人とおふたりで、冬を越して春になったら帰ってくる)


別荘にあの執事がいないなら。
明日の朝一番で湖へ向かおう。
もう家には戻らない。
俺をいない者として扱うなら、こっちから棄ててやる。
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