初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました
(上のジュノー君は凄く可愛いの
あの御方にそっくりで、あの御方の小さい頃は
こんなに綺麗な男の子だったんだな、って……
ジュノー君と遊ぶのは楽しかったわ
抱き締めたら、お顔を赤くするの

……だけど、下の娘はね、女に瓜二つ
皆に隠れてわざと足を踏んだり、つねってやったの
お姉ちゃまなんて最初は纏わり付いて来てたけどその内私の顔を見たら逃げるようになってきて
可愛くなかったわ
そんな娘をあの御方が『僕の小さなお姫様』って抱き締めるのも、気にくわなかったの
そんな嘘を私の前で言わなくちゃいけない
あの御方がお気の毒だったわ)

俺がいることなど忘れたように。
熱に浮かされるように。

クリスティン様は話し続けた。


(皇帝陛下から下賜された女よ
あの御方は我慢されて優しくしてあげてたの)

クリスティン様は自分自身に語りかけているようにも見えた。


(毎日、朝の庭をふたりで腕を組んで散歩して
いらっしゃった
あの女はおばさんの癖に、甘えた声でずっと
話しかけてるから、
あの御方は黙って頷いていらしたの
気持ち悪いのを我慢されているのがわかったわ
早くふたりきりになってお慰めしたかったのに、
全然、ふたりになれなくて……)
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