初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました
(あの御方の護衛の男も何かと邪魔ばかりして……
アーロンの側近が嫌な感じだったけれど、
その護衛の男も同じで、目障りだった)

この時だけクリスティン様の表情が歪んだ。


(もうすぐ帝都を離れなくちゃいけないのに、
ふたりになれないから、娘を使うことにしたの

子守りの目を盗んで誰もいない部屋に連れ込んでこう脅したの
『言うこと聞かないと、次はお兄ちゃまを苛めてやるから』ってね
勿論、ジュノー君を苛める気なんかなかったわよ
だけど娘は本気にして震えてた)

その時の事を思い出して、
クリスティン様はクスクス笑った。
機嫌が短い間隔で上下している。


(『おばあちゃまのお家にお母ちゃまとお兄ちゃまと3人で行ってらっしゃい』って、命じたの
おばさんにそっくりな娘が泣きそうになっているのを見ていたら、気分が高まったわ
あの平民の女が処刑された時以来よ、あの時も
凄く気分が良かったの) 
 

うっとりした様子でそう言って、微笑みながら
クリスティン様は自らの下腹部を撫でた。


(ねぇ、この子はさぞや……
あの御方に似ていることでしょうね?)
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