初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました
約束の時間を過ぎても、ノーマン様はいらっしゃいません。
あの御方に割ける時間は、今日の午前中しかありませんでした。

(また嘘を吐かれたのかしら?)


予定の空いたこの時間で、私は夜会の始まる前、皇太子殿下から告げられた3年前の真実を思い
返していました。


「俺は君をテストしていたんだ」

「何のテストですか?」

王女殿下との顔合わせを無事に済ませ、来年の御興入り後はお側に付かせていただくことに、決定しました。


「3人だけのお茶会だよ、君に色々話したね」

「……」

「結構、きつい内容の話も聞かせた
 本当は君は聞きたくもなかったと、知っていたけれど、半ば強引だったな」

「ご存じでしたか?」

「俺の言葉を聞き逃していないか、その言葉から物事を考えようとするかを、確認していた
 人の話をもらさず聞けるかどうかが、俺の目安だったから」


魅了や真実の愛や、それを巡るそれぞれの思惑など、殿下は私に聞かせながら、その反応を確認
されていたと、いうことなのでしょう。


「俺の目から見て君なら大丈夫だと判断して、
母上に皇太子妃の戦力になるよう育てて欲しいとお願いした」

「……」


王家と皇家、どちらも表には出せない、それを
『たかが伯爵家の娘』に、お話になった理由。

それは、メイベル殿下の為。
おひとりで王国からダミアン殿下の元に嫁がれ、皇宮で戦う皇太子妃殿下の為。


「気を悪くしたかな?」

「とんでもございません
 ご信頼をいただけたという事と、受け取らせて
 いただきました」


当時、エドガー様からは
『殿下が気に入られたから』と、漠然とした応えを聞いておりましたが、私はどこか納得出来て
いませんでした。
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