初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました
殿下の赤い瞳は、それだけではない御方である事を知らせていました。


「女性の世界は、俺やエドガーも手助け出来ない
 君なら大丈夫だと、母上も言っている
 メイベルをしっかり支えてくれ」

「謹んでお請け致します」


私は殿下に、最上級のカーテシーを披露致しました。



 ◇◇◇


「おはよう、ロティ
 あいつは来ていない?」

私の頬にくちづけを落としながら、エドガー様は尋ねられました。

我が家での昼食を約束していました。
ノーマン様の事を心配して、早めに来てくださったのでしょう。

エドガー様が向かいの席に座られました。
目の前のティーカップは伏せられています。


「あいつが来たら、席は外すよ」

「これから来られても、時間切れです
 帰っていただきます」

「せっかく貰ったチャンスだったのに、
 馬鹿だな」


いつもはノーマン様に対しては、もっと辛辣な 物言いでしたのに。
今日のエドガー様の口調は、優しいような印象を受けました。


私はお砂糖の数をお聞きしながら、尋ねました。


「こちらでのお仕事は、全部お済みになりましたの?」

口に含んだ紅茶を飲み下してから、エドガー様は答えられました。


「昨夜は予定していたよりは、時間がかかって
しまったけれど、全て完了したよ」

「それはお疲れ様でした
 では王宮に戻る前に寄りたい所があるのですけれど、お付き合いしてくださいますか?」

「君のお望みのままに」

エドガー様は頷かれ、微笑んでくださいました。
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