初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました
「民間療法と言われている治療です
 領内のそれぞれの家に、昔から口頭でのみ伝わっていて、多種類の薬草を煎じたり、すり潰して布に塗り傷口に貼ったりします」

「私そんな治療受けた覚えがないのだけれど」

「医師や薬師に診てもらうのは、高額ですからね
 領民にはなかなか……」

一度は自分がこの地を治めるのだと思っていたのに、私はそのような事は知りませんでした。


「勿論、義父上はそれをご存知ですが、商売にする気はなかったらしくて」


(お父様がご存じのお茶、これって…!)

この事に間違いないと思いました。
以前、エドガー様から聞かせていただいた、皇妃陛下が興味を持たれた、ガルテンのお茶。

あの時以降、特に皇太子殿下からも皇妃陛下からも、御尋ねはございませんでしたので、
私もお父様に確認はしていませんでした。


「その煎じた薬は、例えば気鬱の病に効いたりするのかしら?」

「気鬱の病に、ですか?」

急に前のめりになった私に、ギリアンが驚いて
いました。

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