初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました
「エドガー様……」

「金が払えなくて失われるはずだった命が助かる未来だ」

「……」

「ギリアンのお陰で、ガルテンの名は後世に残るだろう」


私も一度はガルテン伯爵家を継ごうと、私なりに学んだつもりでした。
領民の生活を向上させる為に、私が考えていたのは病院施設の充実や教育制度の見直しでした。

領民の伝統、彼らの日々の暮らし等を、
私は知っていませんでした。


「義弟はきっと良い領主になりますね」

「そうだな、俺もギリアンを尊敬する」



春風がそよそよと私達のテーブルの間をゆっくり通り過ぎていきます。
穏やかな日差しが心地よく、私はエドガー様に
打ち明けました。


『私はノーマン様に会える今日を、ずっと心待ちにしていたのです』と。


 ◇◇◇


話をしたい、ノーマン様からそう言われて
私が望んだのは。


ノーマン様が話される側で
適当に流して
時々相槌を入れて微笑んで
内容を忘れてしまう

それをやり返してやりたかったのです。


『やられた分は、やり返す。
傷付けられたのなら、決して泣き寝入りを
してはならない』と。
これは皇妃陛下からの教えです。
陛下も外国からの御輿入れの姫でした。


この2年、私はそうして帝国の皇宮で。
『皇太子殿下のお気に入り』と噂され、揶揄されながら、戦い努力してきたのです。
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