初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました
ステーシー様はクラスメートの子爵家のご令嬢
です。

ふわふわとそんなことを考えていた私は
ノーマン様が仰られた事を、すぐには理解出来ませんでした。


「いきなりで申し訳ないけれど、今年の夏は
君と会えないと思う」
 
(えーと、今会えないと仰った?)


「会えないとは……お仕事でしょうか?
 ご都合の良い日を、いついつと教えていただければ、私の予定を合わせますわ」

気分は下降線をたどりつつありましたが、表情に出してはいけないと、私は無理をした笑顔を彼に向けました。


予定を合わせるも何も。
私のスケジュール帳の夏の3か月間は、白紙の
状態でしたが。
ノーマン様のご予定がわからなかったので、友人とも何一つ約束をしていなかったからです。


「そういうの、悪いけど無理なんだ
 夏の間、ずっと違う場所へ行くから」

ますます仰っている意味が理解出来ませんでした。


「秘密の任務で、違う所に行かれるの?」

「はぁ?俺は第3だよ!
 第3に言えないような秘密の任務があるわけないだろ!
 特に俺なんか『たった2年の腰かけ』なんて、 呼ばれてるのに!」

驚きました。
こんな風に私にきつい物言いをされるノーマン様は初めてでした。

吐き出すように言われたその言葉も、その内容も。
第3騎士隊の事をこのように話される彼の表情は
歪んで見えました。
< 28 / 190 >

この作品をシェア

pagetop