初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました
ノーマン様と王宮に到着したのは、その断罪劇が終わった後の事でした。
会場入口で招待状と身元の確認もされずに、入場したのは初めてです。

両方に開かれたままの扉、侍従やメイド達が
バタバタと駆け回り、出席出来ないはずの文官や警備の第1の騎士達が出入りしている様子は、
ただ事ではございません。


若い招待客達はどう対処すれば良いのかわからないと言いたげで、それでいて興奮している様が
見てとれました。
皆様ご友人同士で固まって立ち、小声で会話を
されてました。


「王太子殿下が……」

「クリスティン様に……」

と、途切れ途切れに聞こえてくるその名前に。

ノーマン様は顔色を変え、エスコートしていた私の右手を解き、ご友人の方に行ってしまわれました。
ひとりにされてしまった私は仕方なく辺りを見回して、友人のお顔を見つけました。


「ごきげんよう、ステーシー様
 私遅れてしまいましたの
 皆様、いかがなさいましたの?」

親しい仲で行われる軽い抱擁の挨拶を
ステーシー様はなさってから、声をひそめて
一気に私に教えてくださいました。


「アーロン王太子殿下が開始のご挨拶の途中で、
 クリスティン様をお呼びつけになって、
 婚約破棄を宣言されて、
 国外追放をお命じになったの!」
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