初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました
それから1年が過ぎ、春が終わる頃クリスティン様はカステード王国に戻って来られました。

その帰国は王国の社交界に瞬く間に知らされました。
クリスティン様にお会いしたいと、高位貴族からの招待状が降る様に公爵家に届けられているそうです。
その噂は私も存じておりましたが伯爵位の我が家には何の関係もないと、思っておりましたのに。


「クリスティン様にお誘いを受けたんだ」

誇らしげにノーマン様は胸を張って仰いました。


「クリスティン様には接見を申し込んでも、なかなかお取り次ぎいただけないと、聞いておりますが」

「ご帰国されて、あちらからご連絡をいただいて
 先週末に公爵邸に招いてくださった」

その言葉が信じられなくて、私は驚くばかりでした。


「公爵家の湖畔の別荘で一緒に夏を過ごそうと、
お誘いをいただいたんだ
 断ることは出来ないのは、わかるよね?」

ランカスター公領にある湖は美しいことで有名でした。 
公爵閣下がお認めになった高位の貴族のみが周辺に遊びに行く事が出来るとの事なので、
その美しい湖を、私達は噂に聞くだけで目にすることは一生ないのです。
< 49 / 190 >

この作品をシェア

pagetop