初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました
「今夜はブライトン伯爵家の皆様は、ご出席されていなかったわね?」

ノーマン様のご家族は王都のタウンハウスを引き払われ、ご領地の館に移られていました。


「義父上が是非にとお声がけしたのですが、
義姉上に合わす顔がないと、手紙を送ってこられました」

私にいつも優しく接してくださっていた
ブライトンのおじ様とおば様、お二人のお兄様のことを思い出すと、胸が痛みました。

(だから私は破棄ではなく、解消を選んだのに)


「初恋の相手の落ちぶれた姿を見るのは、辛い
ですか?」

ギリアンは私の先程の表情から、ノーマン様の
ことを考えているように受け取ったのでしょう。


「いいえ、彼がサイズの合っていない貸衣装を 着ていようと、特に何も思わないわ」

側を通った給仕からカクテルのグラスを受け取って、ギリアンは渡してくれました。


「これはキツくないので、どうぞ」

「あなたは初恋のご令嬢が変わっていたら、どう思うの?」

カクテルをいただきながら、からかうように
ギリアンに尋ねました。


幼い頃から彼はどこか冷めたようなところのある男の子でしたので、そんな彼の隠された初恋の話を聞き出そうと、いたずら心を出した私でした。


「私の初恋は貴女です、義姉上」
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