初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました
少年は自分の感情が、少女に読まれていることに気づかない。

両親に、特に母親から言われて少女の話に付き
合っている。

聞き流して、
適当なところで微笑んで、相槌を打つ。
そして内容を忘れる。


うまくやれていると、少年が自分の振舞いに満足していることも
少女にはわかっていたが怒るような事でもない。



少年とは去年婚約した。

貴族の子供ならば、この年齢で婚約者が出来る
ことも珍しくはない。

その婚約を望んだのは、少女の母親だった。


朝食の席で、貴女が少年を好いているのを知っていると、母親に面と向かって言われて、黙っていたら
夕食の席で、父親から婚約を決めてきたと、言われた。
それを少女は黙って受け入れた。


自分が結婚したい程、少年を好いているのか自分でもわからなかったが、
少年の兄達よりは好意を持っていた。
少年は母親似で三兄弟の中では飛び抜けて美しかったが、それが気に入ったわけではない。


敢えて理由を言うとするなら、兄達は少女に対してはまるで妹のように可愛いがってくれたけれど
血の繋がった弟である少年には冷たく当たった。

それを見るのが嫌で、自分には見せる兄達の笑顔が少し怖かったからだ。
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