初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました
ノーマン様のことを『次はない』と切り捨てる
ように宣言されていたお父様が、今回のことに
ついては何も仰らないのが却って怖くて、
食事の席以外では、出来るだけ顔を合わせない
ようにしていました。

私は夏が終わるのを待つことしか、出来ません
でした。


ノーマン様が約束通り私の元へ戻ってきても、
以前と同じように愛せる自信はありません。

(もう無理かもしれない)

彼を想い続けるのは、難しくなってきていました。


私が覚書ノートを最後に開いたのは、いつだったでしょう。

『脳内お花畑』と呼ばれた私も、さすがに能天気な事を言うことが出来なくなってきていました。

周りが私を気遣い、ノーマン様の名前さえ出さない状況に、段々と追い詰められているような気がしました。


お母様が望んだノーマン様と結ばれて、男児を
生むこと。
それが私の夢でしたけれど。


『ノーマン様と必ず結婚させて下さい』

幼い頃、
お月様に願った私の夢は今や呪いのように
私を苦しめていました。


私は…私自身に呪いをかけてしまったのでしょうか?
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