初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました
思わず、声が高くなりました。


「だって義父上、あの時倒れそうになってましたよ
 帝国皇家から皇太子印が押された書状を受け取ったんですから」 

「……」

「それも普通に国外特別便で郵送されたんじゃなくて、帝国からの使者が直接届けに来て、
 その内容は義姉上を侍女として皇宮に召し上げる、ですからね  
 侍女とは名ばかりで愛妾だと、受け取って」

(確かに帝国内でも一時期噂になったわ
正妃もまだなのに先に愛妾を囲うとは、って)


皇太子殿下はそんな噂を面白がって笑っていらっしゃいましたけれど。


「殿下は余程カステード女がお好みなのだと、言われているらしい」

皇太子妃もカステードの王女殿下に内定していたので、それが面白くない帝国貴族が悪し様に噂をしていたのです。


「でもね、正式発表されてなかったからお父様にも言えなかったのだけど……
 ずっと皇太子殿下は王女殿下に一途だったの」

「まあ、そんな関係ではないとわかって、安心
しましたよ
 エドガー様をご紹介いただいて、義姉上のお幸せそうなお顔も拝見出来ました」

「貴方には私のひどい顔を見られているものね」

 
あの日、私がノーマン様の裏切りを知った日。

ギリアンは今日と同じように傍らに居てくれました。
今日と同じようにエスコートして、その場から
連れ出してくれました。
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