初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました

望まれて婿入りするのだから (元婚約者視点)

今から思い返すと、俺は多分飽き始めていたんだろう。

初恋の。
憧れのひとと、ふたりだけで過ごす毎日に。

訪れた当初は有名な景勝地の別荘に心が踊った。
俺等クラスの貴族には無縁のリゾート地。

王族しか招かれないと言われる、筆頭公爵家の
別荘で、
俺は女神とひと夏を過ごすことになったのだ。
舞い上がってたと、言うことだ。


 ◇◇◇


絶対結ばれることのない相手だからこそ。
余計に恋い焦がれた女性。
彼女は王太子の婚約者。


入園式で初めて見た彼女の周囲には、普通の人間には近づけないオーラがあった。
一目で特別な女の子だとわかった。

昔しつこい位にシャルが俺に読むよう勧めてきた絵本に出てくる月の女神。
年齢的に有り得る筈がないのに、彼女がその女神のモデルだと思った。
それ程、彼女は表紙の女神そのものだったのだ。


クリスティン・マクロス・ランカスター公爵令嬢


いつも遠くから彼女を見つめていた。
同じ学年だったが簡単には近づけないし、近づくつもりもなかった。

人は神に関わってはいけない。


ただ婚約者である王太子が彼女を蔑ろにして、
平民の女を大事にしてる姿を、
周囲に見せつけてるのには腹が立った。

自分も婚約者を蔑ろにしていたのに。
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