初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました
あの夜以前の日々が戻ってきていた。
学園騎士科を出た俺は第3騎士隊に配属された。


もしかしたら、と思った。
俺は第1に入りたくて配属希望届に書いて提出した。
第1に配属されるのは、見映えのする貴族の息子達だ。
純白の隊服は汚れるような仕事をしない現れだと、騎士科では言われてた。


「ノーマンなら第1行けるんじゃないか」 

たかがガキの同級生にそう言われただけなのに、
俺は自信を持ってしまった。
それに面接した文官は俺が退出しようとすると
わざわざ呼び止めてこう言ったのだ。


「ご希望が通るよう善処致します」と。


それなのに、結果は第3だった。

都内の巡回や平民間のトラブル処理に走らされるのかと思うと、憂鬱になった。
もしかしたら、シャルの父親の差し金か。
そうとしか、当時の俺には思えなかった。


シャルの父親のガルテン伯爵は顔が広い。
言うことを聞かない婿に思い知らせてやろうと
裏から手を回したに違いない。

今更、第3だから辞めるとは言えない。
意地でも2年は続けるしかない。


俺の人生は俺の思い通りにはいかない。


荒んだ気持ちの持っていくところがなくて、
何の罪もないシャルを恨んだ俺は。

最低の男だった。
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