初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました
「先程、私が初恋だと言ったことは気にしないで下さい
 今夜以降、この事で義姉上を煩わせることは
ありません
 夜会のパートナーをお願いしてくださったので、ちょっと浮かれてしまいました」

そう早口に言うと、ギリアンは一気にカクテルのグラスを空けました。


「私が隣に居る間は、あの馬鹿もさすがに声を
かけて来ることはないでしょう
 時間まで私が壁になりますので」

私の婚約者のエドガー様も夜会には出席されているのですが、今はご一緒することは出来ません。

ギリアンはくれぐれも私をひとりにしないよう、
エドガー様から頼まれている様でした。


「ギリアン、大丈夫ですから
 貴方はそろそろマーガレット様の所へ行って差し上げて?」

マーガレット・グラハム・ラッフルズ伯爵令嬢はギリアンの婚約者です。
養子縁組と同時にお父様が整えられた婚約でしたが、ふたりはとても仲が良くお似合いでした。


マーガレット様はエドガー様とご一緒出来ない私の事情をギリアンから聞いて、パートナーをお譲りくださったのでした。

お祖父様の前ラッフルズ伯爵様のエスコートで
参加されたマーガレット様に、私は申し訳なく
思っていました。


「せっかくの夜会なのですもの
 マーガレット様をお誘いして、貴方もダンスを楽しんでくださいませ」
< 8 / 190 >

この作品をシェア

pagetop