初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました
両家による話し合いもすっぽかしたと、責められたが俺は知らなかった。
騎士団に伝言をしたのだと言うが、俺はずっと
休んでいたので、受け取っていなかった。


「騎士団からノーマン様に書状が届いております」

家令から渡された知らせには、俺を解雇する旨が記されていた。



実家に居場所がなくなった。
家族からは顔も見たくないと徹底的に避けられ、
使用人は俺とは目も合わさない。

責められる覚悟でガルテン伯爵家にシャルを訪ねたが、当たり前のように門番は通してくれなかった。


「申し訳ございませんが
 貴方様だけはお通ししてはならぬと、
 ご当主様に厳命されております」

幼い頃からの顔見知りの門番だったが、睨み付けるように俺を見た。


シャルに会うには学園に行くしかないと、
下校時間に行った。


いくら卒園生でも、事前に許可がなければ校舎内に立ち入りは出来ない。
校舎の待ち合いで、各家門の御者の間に立っている俺を、チラチラと生徒達が見て通り過ぎた。

領地経営科の紫色のリボンをした女生徒が何人か目の前を通ったが、その中にシャルはいなかった。

ようやく見覚えのある顔を見つけて、俺は声をかけた。

「ギリアン!待ってくれ!」
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