初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました
ギリアンはチラッとノーマン様の位置を確認すると、エドガー様がいらっしゃる方に体を向け右手を挙げて、人差し指をくるくると回しました。

一瞬のことでしたが、私以外にもその動作に
気づいた方がギリアンを何度もご覧になって
いらっしゃいました。

エドガー様と秘密の合図でも決めてあったので
しょうか?


既に両親とエドガー様は、帝国学院の卒業式で
顔を合わせておりましたが、
ギリアンには今回初めてご紹介致しました。

エドガー様からも、パートナーの件をお願いされたギリアンは何やら小声でお話をしていました。
あれは合図の取り決めでもしていたのでしょうか。
ふたりは時々笑いあって、握手などもされていたのです。

(そういえば、ギリアンとノーマン様は子供の頃からの知り合いなのに、全然親しくならなかったわね)


「では、お言葉に甘えます」

ギリアンはすぐに戻りますと、言って
マーガレット様をお誘いに行ってくれました。

彼はエドガー様がいらっしゃるまで私から離れるつもりはなく、それをマーガレット様も受け入れられていました……ですが。


私は婚約者を優先して欲しかったのです。
多分、我慢しておられるだろうマーガレット様のお気持ちを、大切にして欲しいのです。


かつての私は婚約者に大切にされない女だったのですから。
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