初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました
ですが、私なりに覚悟して祖国を出たのですから甘えたことを言ってはいけないと、自分を戒めました。


最終学年に転入してきた留学生。
良くも悪くも、私は皆様に注目をされていたようでした。

何かしらの目標があって帝国に学びに来た様子はないと、向上心の有無はわかるのでしょう。


『こんな時期に祖国から逃げ出した』
『誰も知らないこの国で、やり直すつもりね』

取立てて秀でたところのない私を
『訳あり女』と、陰で噂される方達がいることも気付いていました。


そんな私でしたので、中々こちらの思うようには学院内で人間関係を築くことは出来ませんでした。
既に形成された集団に入ることなど、何もない私には無理でした。
教育水準の高い帝国学院には、他国からの留学生は多数在籍されておりましたが、この年は私ひとりだったのです。


クラスメートとも交わす会話は、挨拶をするくらいの私でしたが、
ある日声をかけてこられた令嬢がいました。


キャロライン・ナイ・バイロン侯爵令嬢です。
彼女は銀に近い灰色の豊かにウェーブした髪、
勝ち気そうに煌めく濃灰色の瞳の持ち主でした。
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