竜帝陛下と私の攻防戦
(私には、強くて頼もしい皇帝陛下お手製のお守りがあるから大丈夫。出逢った頃のベルンハルトさんに比べたら、彼女達なんか怖くない。今さら何を言われようとも、学部も違うし平気だわ)
警戒する友人に「行こう」と声をかけて佳穂は歩き出した。
ベンチに座る女子達は、近付いて来る佳穂を意識しながらお喋りを続ける。
「ブスくせに優しくされただけで勘違いして彼女面していたって、あの子のこと? ダイキが可哀そうー」
「新しい男は外人の男なんでしょ。外人なだけで気持ち悪い奴なんじゃないの? それか、遊ばれているとか?」
「やだぁー」
きゃはははと甲高く笑う女子達は、明らかに佳穂を指差して馬鹿にしていた。
ダイキに振られた時、彼女だと名乗った派手な女子は笑う友人達の言葉に満足して口角を上げた後、悪意に満ちた表情となり佳穂を睨む。
「あいつらぁ」
「好きに言わせておけばいいよ。周りの人達に非常識だと思われて、敬遠されるのはあの人達だから」
以前の佳穂だったら、酷い言われ様に走ってこの場から逃げ出すか、泣き出してしまったかもしれない。
異世界の皇帝と心臓が繋がり心の余裕が生まれたのか、今の佳穂は他人を見下して優越感を得ようとする彼女達に対しては、憐むとともに下らないと一蹴出来るようになっていた。
バタバタバタ!
ベンチの女子達を無視して、出入り口へ向かおうと歩く佳穂の背後から、両手に紙コップを持った女子が小走りに近付く。
「あーごっめんなさーっ!?」
紙コップを持った両手を動かした瞬間、女子の足がもつれてよろめいた。
ばしゃんっ!
よろめいた女子の近くを運悪く歩いていた男子に向けて、彼女の持っていた紙コップからホットコーヒーがぶちまけられた。
「あっちいぃ!?」
「うわぁ!」
熱々のコーヒーを前面に浴びた男子二人は悲鳴を上げた。
ホットコーヒーを顔面にかけられた一人は、堪らずその場に蹲る。
「大丈夫か!」
側で見ていた学生達が男子へ駆け寄り、周囲は騒然となった。
無関係な男子学生を放ってはおけず、佳穂と友人は顔を見合わせるとコーヒーまみれの男子へハンドタオルと差し出す。
「おい、水を持って来るか謝るくらいしろよ!」
紙コップを手に立ち尽くす女子とベンチに座り動こうとしない女子達へ、周囲に飛び散ったコーヒーをティッシュで拭きとっていた男子学生は声を荒げて言い放つ。
「謝る? わ、私は悪くないわ。この二人じゃなくてこっちの女にかけようとしたのよ」
「はぁっ!? 誰かにかけようとしたのかよ!」
混乱のあまり、佳穂を指差し「かけようとした」と白状した女子は、紙コップを床に叩きつけて後退る。
顔面にホットコーヒーをかけられ、軽い火傷を負った痛みと怒りで顔を赤くした男子は立ち上がり、責任転嫁する女子に詰め寄った。
「誰かにかけようとしたんだってさ」
「コーヒーをかけたのに、一言も謝りもしないって最低。あの人達何処の学部?」
「ずっとあそこに座って大声で喋っていてうるさかったし、お菓子は食べ散らかすし、非常識よね」
遠巻きに見ていた学生達から、次々に非難の声が上がる。
多くの学生から非難の視線を向けられ、我関せずといった顔でベンチに座っていた女子達も気まずそうに口を閉じ、ベンチの上に広げていたお菓子とペットボトルを片付け出す。
「あの人、佳穂にかけようとしたって」
「いいよ。今のうちに行こう」
ベンチに飛び散ったコーヒーを拭き終った佳穂は、謝罪について言い争う男女に背を向けた。
これ以上、彼女達とは関わるのは危険だと本能が警笛を鳴らしていた。
「待ちなさいよ!」
カツンッ!
出入り口へ向かおうとした佳穂の前に、ヒールで床を強く踏み音を立ててユリが立ちはだかった。
以前、仲間と共に佳穂を見下して笑っていた綺麗な顔は怒りで歪み、今にも飛び掛からんばかりの形相で睨んでいた。
「アンタ、ダイキ達に何をしたのよ! 飲み会で潰して滅茶苦茶にしてやるつもりだったのに、ダイキ達はもうアンタに関わりたくなって、私とも距離を置きたいって言って来たのよ!」
鬼の形相と仁王立ちで立ちはだかるという、悪役のような態度に引いていた佳穂の心が一気に冷めていく。
「滅茶苦茶にしてやるって、どういうことですか? 私は貴女方に何もしていませんし、彼氏さんとの関係はお二人で話し合って解決してください」
「ムカつくっ! 上手くいかないのは全部アンタのせいよ!」
叫んだと同時に、ユリは腕に掛けていたバッグの持ち手を握り、ハンドバッグを振り上げた。
警戒する友人に「行こう」と声をかけて佳穂は歩き出した。
ベンチに座る女子達は、近付いて来る佳穂を意識しながらお喋りを続ける。
「ブスくせに優しくされただけで勘違いして彼女面していたって、あの子のこと? ダイキが可哀そうー」
「新しい男は外人の男なんでしょ。外人なだけで気持ち悪い奴なんじゃないの? それか、遊ばれているとか?」
「やだぁー」
きゃはははと甲高く笑う女子達は、明らかに佳穂を指差して馬鹿にしていた。
ダイキに振られた時、彼女だと名乗った派手な女子は笑う友人達の言葉に満足して口角を上げた後、悪意に満ちた表情となり佳穂を睨む。
「あいつらぁ」
「好きに言わせておけばいいよ。周りの人達に非常識だと思われて、敬遠されるのはあの人達だから」
以前の佳穂だったら、酷い言われ様に走ってこの場から逃げ出すか、泣き出してしまったかもしれない。
異世界の皇帝と心臓が繋がり心の余裕が生まれたのか、今の佳穂は他人を見下して優越感を得ようとする彼女達に対しては、憐むとともに下らないと一蹴出来るようになっていた。
バタバタバタ!
ベンチの女子達を無視して、出入り口へ向かおうと歩く佳穂の背後から、両手に紙コップを持った女子が小走りに近付く。
「あーごっめんなさーっ!?」
紙コップを持った両手を動かした瞬間、女子の足がもつれてよろめいた。
ばしゃんっ!
よろめいた女子の近くを運悪く歩いていた男子に向けて、彼女の持っていた紙コップからホットコーヒーがぶちまけられた。
「あっちいぃ!?」
「うわぁ!」
熱々のコーヒーを前面に浴びた男子二人は悲鳴を上げた。
ホットコーヒーを顔面にかけられた一人は、堪らずその場に蹲る。
「大丈夫か!」
側で見ていた学生達が男子へ駆け寄り、周囲は騒然となった。
無関係な男子学生を放ってはおけず、佳穂と友人は顔を見合わせるとコーヒーまみれの男子へハンドタオルと差し出す。
「おい、水を持って来るか謝るくらいしろよ!」
紙コップを手に立ち尽くす女子とベンチに座り動こうとしない女子達へ、周囲に飛び散ったコーヒーをティッシュで拭きとっていた男子学生は声を荒げて言い放つ。
「謝る? わ、私は悪くないわ。この二人じゃなくてこっちの女にかけようとしたのよ」
「はぁっ!? 誰かにかけようとしたのかよ!」
混乱のあまり、佳穂を指差し「かけようとした」と白状した女子は、紙コップを床に叩きつけて後退る。
顔面にホットコーヒーをかけられ、軽い火傷を負った痛みと怒りで顔を赤くした男子は立ち上がり、責任転嫁する女子に詰め寄った。
「誰かにかけようとしたんだってさ」
「コーヒーをかけたのに、一言も謝りもしないって最低。あの人達何処の学部?」
「ずっとあそこに座って大声で喋っていてうるさかったし、お菓子は食べ散らかすし、非常識よね」
遠巻きに見ていた学生達から、次々に非難の声が上がる。
多くの学生から非難の視線を向けられ、我関せずといった顔でベンチに座っていた女子達も気まずそうに口を閉じ、ベンチの上に広げていたお菓子とペットボトルを片付け出す。
「あの人、佳穂にかけようとしたって」
「いいよ。今のうちに行こう」
ベンチに飛び散ったコーヒーを拭き終った佳穂は、謝罪について言い争う男女に背を向けた。
これ以上、彼女達とは関わるのは危険だと本能が警笛を鳴らしていた。
「待ちなさいよ!」
カツンッ!
出入り口へ向かおうとした佳穂の前に、ヒールで床を強く踏み音を立ててユリが立ちはだかった。
以前、仲間と共に佳穂を見下して笑っていた綺麗な顔は怒りで歪み、今にも飛び掛からんばかりの形相で睨んでいた。
「アンタ、ダイキ達に何をしたのよ! 飲み会で潰して滅茶苦茶にしてやるつもりだったのに、ダイキ達はもうアンタに関わりたくなって、私とも距離を置きたいって言って来たのよ!」
鬼の形相と仁王立ちで立ちはだかるという、悪役のような態度に引いていた佳穂の心が一気に冷めていく。
「滅茶苦茶にしてやるって、どういうことですか? 私は貴女方に何もしていませんし、彼氏さんとの関係はお二人で話し合って解決してください」
「ムカつくっ! 上手くいかないのは全部アンタのせいよ!」
叫んだと同時に、ユリは腕に掛けていたバッグの持ち手を握り、ハンドバッグを振り上げた。