竜帝陛下と私の攻防戦
異世界転移した私と竜帝陛下のその後
眠り姫の目覚めと竜帝陛下のお強請り
水とは異なる液体の内へ沈んでいった佳穂は、長くて暗い穴を滑り落ちていく。
遊園地の落下系アトラクションは平気でも、終わりが見えない落下は怖くて、何かに掴まろうと腕を伸ばしても穴の壁面は凹凸はおろか植物も鉱物も無い。
掴む物が何も無く更に落下速度が加速していく、常世の闇へ落ちていくような気すらして怖くて恐ろしくて、真っ暗闇の中で佳穂は「助けて」と音に成らない声で叫ぶ。
何かにすがり付きたくて、潰されそうな心を助けて欲しくて必死で腕を伸ばした。
「カホ」
耳触りの良い低くて甘く響く声が聴こえ、次いで力強い両腕が落下途中の佳穂の肩と腰を引き寄せる。
ぎゅうっと優しい力加減で抱き締めてくるその腕の中は、先程とは打って代わり泣きそうになるくらい安心出来る場所。
抱き締める腕に甘えるように佳穂は頬を擦り寄せた。
大きくて力強い手が頭を優しく撫でる。
耳元で何度も何かを囁かれて、頬や唇にやわらかくてあたたかなモノが触れた。
目覚めなきゃと思う反面、優しく触れる手が嬉しくて佳穂は目覚めよと命じる声を無視する。
暫くの間、髪や頬を撫でていた手のひらは下へ下がっていき胸の膨らみへ触れた。
やわやわと服の上から優しく胸を揉まれ、むず痒い不思議な感覚に佳穂は息を吐く。
手の平の持ち主は、胸を揉みながら佳穂に覆い被さって首筋を食みだす。
「はぁ、あっ」
唇が触れる度、胸を揉まれる度に甘い吐息が口から漏れてしまう。
大きな手のひらが服の中へ入り込もうとした時、ドアがノックされた。
舌打ちをしたその人は、呼びに来た誰かの声に返事をしてから、名残惜しそうに佳穂から離れて行く。
離れていく温もりの主へ「待って」と伝えたくなって、佳穂は口を開いた。
「ん……」
ぬるま湯のような、心地好さの中を漂っていた佳穂の意識は急激に浮上し、小さく呻いて重たい目蓋を僅かに開いた。
目蓋は錆び付いてしまったのか、重たくてなかなか開いてくれない。
「う……此処、は」
ようやく半分開いた視界で見えたのは、滑らかなベッドシーツ。
横を向いた状態から顔を動かして、小さく「は?」と呟いた。
見えたのは、寝かされていたベッドの幾重にも布が重なる天井部分。
所謂、天蓋というものか。
自室の寝具はシングルサイズのベッドだからこんなに広く無いし天井は付いて無い。
豪華な装飾が付いたベッドは病院のベッドでも無い。
さらに顔を動かして、寝ていた室内を見渡した佳穂はポカンと口を半開きにして呆けてしまった。
クリーム色の壁は花柄の縁取り、天井には数個の花を形取った照明、置かれている建具も高級そうな物ばかり。
脚には細工が彫られた丸テーブルや赤い皮貼りソファーとか、見学に行ったことがある貿易で財を成した洋館の主人の部屋並み、いやそれ以上の豪華な部屋。
お金持ちの部屋どころじゃなく、ヨーロッパの貴族かお姫様の部屋だ。
豪華な洋館に住む、貴族やお金持ち持ちなど知り合いにはいない。
これは、どういうことかと意識を失う前の状況を思い返して……佳穂は身体中の血が冷えていく感覚を覚えた。
元の世界へ帰ろうとしたベルンハルトの手を掴んで、見知らぬ場所へ行ったなんて漫画やライトノベルに有りがちな展開ではないか。
「まさか、これって」
離れたくなと言う思いから、差し伸べられたベルンハルトの手を掴んでしまい、一緒に異世界へ転移してしまったのだ。
自業自得といえ、何てことだと佳穂は深い息を吐いた。
ベッドの上へ両手を突いて、ゆっくりと上半身を起こす。
上半身を起こして違和感を抱いた。佳穂の身に付けている服は、シルクのように肌触りの良い白色のネグリジェに変わっていたのだ。
(ええ? いつの間に服を着替えたの?)
もしかしたら長らく眠っていたのかもしれない。身体はひどく重くて、錆び付いてしまったかのように身体中の筋肉が強張っていた。
動かしにくい腕と脚の力を使い、何とか這ってベッドの端まで辿り着く。
ここまでは来られたとしても、果たして力が入らない脚で立ち上がり歩けるのか。
カーペットが敷かれているから転倒しても然程痛くはないはず。
転倒覚悟でベッドから下りようと、そろりそろり右足の先を床へ下ろした。
カチャリ
ドアが開く音が聞こえ、佳穂は右足をベッドの上から下ろした状態で固まった。
軽い足音と共に現れたのは、紺色で裾にフリルの付いた足首丈ワンピースを着て、白髪が混じった栗色の髪を一つに結い上げた中年女性。
固まる佳穂へ向かって女性は微笑むとていねいに頭を下げた。
「お目覚めになられましたか?」
女性が発した少し低い優しい声で身体の力が抜けていく。
東洋人とは違う外見の彼女と言葉は通じると分かって安堵した。
「あの、此処は、何処ですか?」
「此処はトルメニア帝国帝都カバルディアでございます。神子姫様」
「えっ?」
思わず口元を両手で覆ってしまった。
異世界だろうと思ってはいたが、改めて言われると身体が震えてくる。
以前、ベルンハルトが言っていたトルメニア帝国へ転移したのはやはり彼が絡んでいるのか。
半ば混乱しつつも、頭の中で情報を整理していた佳穂は首を傾げた。
「神子、姫?」
神子姫とは何のことだろうかと、嫌な予感に眉尻を下げた佳穂は女性を見詰めた。
遊園地の落下系アトラクションは平気でも、終わりが見えない落下は怖くて、何かに掴まろうと腕を伸ばしても穴の壁面は凹凸はおろか植物も鉱物も無い。
掴む物が何も無く更に落下速度が加速していく、常世の闇へ落ちていくような気すらして怖くて恐ろしくて、真っ暗闇の中で佳穂は「助けて」と音に成らない声で叫ぶ。
何かにすがり付きたくて、潰されそうな心を助けて欲しくて必死で腕を伸ばした。
「カホ」
耳触りの良い低くて甘く響く声が聴こえ、次いで力強い両腕が落下途中の佳穂の肩と腰を引き寄せる。
ぎゅうっと優しい力加減で抱き締めてくるその腕の中は、先程とは打って代わり泣きそうになるくらい安心出来る場所。
抱き締める腕に甘えるように佳穂は頬を擦り寄せた。
大きくて力強い手が頭を優しく撫でる。
耳元で何度も何かを囁かれて、頬や唇にやわらかくてあたたかなモノが触れた。
目覚めなきゃと思う反面、優しく触れる手が嬉しくて佳穂は目覚めよと命じる声を無視する。
暫くの間、髪や頬を撫でていた手のひらは下へ下がっていき胸の膨らみへ触れた。
やわやわと服の上から優しく胸を揉まれ、むず痒い不思議な感覚に佳穂は息を吐く。
手の平の持ち主は、胸を揉みながら佳穂に覆い被さって首筋を食みだす。
「はぁ、あっ」
唇が触れる度、胸を揉まれる度に甘い吐息が口から漏れてしまう。
大きな手のひらが服の中へ入り込もうとした時、ドアがノックされた。
舌打ちをしたその人は、呼びに来た誰かの声に返事をしてから、名残惜しそうに佳穂から離れて行く。
離れていく温もりの主へ「待って」と伝えたくなって、佳穂は口を開いた。
「ん……」
ぬるま湯のような、心地好さの中を漂っていた佳穂の意識は急激に浮上し、小さく呻いて重たい目蓋を僅かに開いた。
目蓋は錆び付いてしまったのか、重たくてなかなか開いてくれない。
「う……此処、は」
ようやく半分開いた視界で見えたのは、滑らかなベッドシーツ。
横を向いた状態から顔を動かして、小さく「は?」と呟いた。
見えたのは、寝かされていたベッドの幾重にも布が重なる天井部分。
所謂、天蓋というものか。
自室の寝具はシングルサイズのベッドだからこんなに広く無いし天井は付いて無い。
豪華な装飾が付いたベッドは病院のベッドでも無い。
さらに顔を動かして、寝ていた室内を見渡した佳穂はポカンと口を半開きにして呆けてしまった。
クリーム色の壁は花柄の縁取り、天井には数個の花を形取った照明、置かれている建具も高級そうな物ばかり。
脚には細工が彫られた丸テーブルや赤い皮貼りソファーとか、見学に行ったことがある貿易で財を成した洋館の主人の部屋並み、いやそれ以上の豪華な部屋。
お金持ちの部屋どころじゃなく、ヨーロッパの貴族かお姫様の部屋だ。
豪華な洋館に住む、貴族やお金持ち持ちなど知り合いにはいない。
これは、どういうことかと意識を失う前の状況を思い返して……佳穂は身体中の血が冷えていく感覚を覚えた。
元の世界へ帰ろうとしたベルンハルトの手を掴んで、見知らぬ場所へ行ったなんて漫画やライトノベルに有りがちな展開ではないか。
「まさか、これって」
離れたくなと言う思いから、差し伸べられたベルンハルトの手を掴んでしまい、一緒に異世界へ転移してしまったのだ。
自業自得といえ、何てことだと佳穂は深い息を吐いた。
ベッドの上へ両手を突いて、ゆっくりと上半身を起こす。
上半身を起こして違和感を抱いた。佳穂の身に付けている服は、シルクのように肌触りの良い白色のネグリジェに変わっていたのだ。
(ええ? いつの間に服を着替えたの?)
もしかしたら長らく眠っていたのかもしれない。身体はひどく重くて、錆び付いてしまったかのように身体中の筋肉が強張っていた。
動かしにくい腕と脚の力を使い、何とか這ってベッドの端まで辿り着く。
ここまでは来られたとしても、果たして力が入らない脚で立ち上がり歩けるのか。
カーペットが敷かれているから転倒しても然程痛くはないはず。
転倒覚悟でベッドから下りようと、そろりそろり右足の先を床へ下ろした。
カチャリ
ドアが開く音が聞こえ、佳穂は右足をベッドの上から下ろした状態で固まった。
軽い足音と共に現れたのは、紺色で裾にフリルの付いた足首丈ワンピースを着て、白髪が混じった栗色の髪を一つに結い上げた中年女性。
固まる佳穂へ向かって女性は微笑むとていねいに頭を下げた。
「お目覚めになられましたか?」
女性が発した少し低い優しい声で身体の力が抜けていく。
東洋人とは違う外見の彼女と言葉は通じると分かって安堵した。
「あの、此処は、何処ですか?」
「此処はトルメニア帝国帝都カバルディアでございます。神子姫様」
「えっ?」
思わず口元を両手で覆ってしまった。
異世界だろうと思ってはいたが、改めて言われると身体が震えてくる。
以前、ベルンハルトが言っていたトルメニア帝国へ転移したのはやはり彼が絡んでいるのか。
半ば混乱しつつも、頭の中で情報を整理していた佳穂は首を傾げた。
「神子、姫?」
神子姫とは何のことだろうかと、嫌な予感に眉尻を下げた佳穂は女性を見詰めた。