一期一会。−1−
カッコよくて、自慢で。

お兄ちゃんがいれば、世界が私を
嫌いになっても良かった。

それくらい、私にとって大切だった人。

「彩羽、大好きだよ」

…私も、大好きだよ。

唯一無二の、私の家族。

…今はもう、会いたくても、会えない。

だって、嫌われてしまったんだから。

5歳のとき、家族に家を追い出された。

両親からは、生まれたときから嫌われていたから、そんな予感はしていたけれど。

兄は、無理矢理施設へ私を連れていき、
強制的に入所させられた。

嘘だって、思いたかった。

兄だけは、兄だけは、私を愛していると
信じたかったのに…。

たったひとつの希望は、打ち砕かれた。

ー『いやっ、嫌だ!お兄ちゃんっ!
 離れないでよぉ!お兄ちゃん!』

施設の先生達に取り押さえられながら、
私は泣き叫んでいた。

とにかく、留まってほしくて。

でも、兄は背を向けて、一切振り向きも
しなかった。

今までに聞いたこともない、冷たい声
が耳を貫く。

ー「お前は俺の妹じゃない。
  二度と、近付くな」



< 163 / 314 >

この作品をシェア

pagetop