一期一会。−1−
そして、近くに転がった私の鞄を拾って
親切にも隣に置いてくれる。

いや受け止めてもらえただけで十分
ですけど!?

どうしてそんな顔してるんですか!

私もう少しで死ぬかもしれなかったのに、
怪我なんて安いもんです!

かなり命を救われてますよ!

『いえ、ありがとうございます』

深い感謝を言葉では言えず、一礼する。

そしたら、イケメンさんは、しゃがんで
私と目線を合わせてきた。

…ん?

サラッと猫毛らしい赤茶の髪を揺れる。

切れ長の目は綺麗な琥珀色をしていて。

ま、まつげ長っ!

距離の近さに、心臓が不規則に鳴る。

ドキッとするなよ私!

これは、不可抗力だ!自然の摂理だ!

目の前にイケメンがいて、ときめかない
乙女はいないでしょ。

「アンタ、名前は?」


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