一期一会。−1−
「一人で来たの?お供は?」

見ればわかるくせに。

『いるわけねぇだろ』

アイツがいたら煩くしかならないから
連れてくるわけがない。

ためないもなく即答すれば、桃李は
心の底から嫌悪する目を向けてくる。

表情が死んでいた。

ゴミ虫でも見たような顔。

「はぁ?何してんの?

 あんまり双見に苦労させないでよ。

 今頃激怒してんじゃないの」

双見=有功な。

『かもな』

「さいってー、自己中すぎ、外道」

散々に言われてる俺は、完全に他人事。

チクチクした桃李の言葉に俺は何食わぬ
顔で頷いた。

今日の桃李は男バージョンらしく、
口調が何割増しにも厳しい。

コイツ中々言うんだよな、女みてぇな、
かわいい顔して。

バラの花には棘がある、とはまさに
このこと。

有功が怒ってる姿など言われずとも
目に浮かぶ。

必ず週5で怒らせるからな、もうなれたけど。


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